プロット

熱(ねつ)のプロット

耽美なふたり(2023.2.11)

・距離は近すぎないのに密な空気感

・卒業という緊張感

・中学の様子を詳細に書く

 

1.加害性(熱には気づいている)

   誰も私を見てくれなかった!

2.接触拒否苦悩性欲の排除(キス)

   千切る彼女の告白(熱の気づき)

3.飾る(虚しい反発)抱擁

 

1

あと2週間で中学を卒業

まだ教室には人が少ない

彼女の絵が外された廊下が騒がしい

廊下には桜の切り絵があった

彼女は卒業してしまう

 

2

放課後に美術室に寄る

廃部寸前の美術部

机が山積みになっている

彼女もいる

「先輩、寂しいです」

ぴったりなサイズのセーラー服

なんで上級生が大人びて見えるか

制服に着られていないから

今まで書いたスケッチブックを見直している

丸椅子を持ってきて覗く

「凄く綺麗です」

「全く賞にも引っかからなかったんだし。君だけだよ、私の絵を褒めてくれるの」

「みんな気付いてないだけですよ」

「あーあ。みんな真っ白な紙から絵を描いてみればいいのよ。その難しさに気づくはず」

裏のゴミ捨て場でゴミ袋を持った下級生が遊んでいる

かじかむ手に息を吐いて温める

 

3

数日後卒業式の練習が始まった

見上げると鮮やかな天井画がある

それは、何が書いてあるのかいまいちわからない抽象的なモザイク画だった

いつか、彼女は好きだ、と言っていた

無意識に女子生徒のうなじを見つめる

また少しずつ身体がグロテスクになっていくような感じがする

僕は加害性だけ抱えている

傷つけてしまう、という確信が漠然とある

そういえばこんなに長い時間を過ごしていたのに彼女に一度も触れたことがないんだ、と気づいた

 

4

帰り際、廊下の絵を見る

静か

緻密で美しい

綺麗に取るとすると大変そう

美術室による

彼女の絵がある

孔雀の羽根

切り絵が貼られる前に2ヶ月間飾られていた

卒業式の後に両親と来て見せるのが楽しみだと言っていた

細かいけれど、それは怖さ、リアリティを覚えさせる

今思えば、早熟だったのだ

誰もその魅力に気づけないほどに

 

5

教室

シンに言う

「卒業だなんて嘘みたいだね」

「なんかあっけないね」

 

6

講堂での歌と言葉だけの練習

彼女の代表の言葉

一つ一つの動きを見つめる

彼女は細身で女子にしては背が高く僕と同じくらい

歌で女子だけが褒められている

声変わりによって奪われた高さ

僕は彼女を見つめている

 

7

講堂から出る時廊下で立ち止まり振り返る

みんな、寂しいと言いながら前に進んでいる

では、僕は?

 

8

練習もそこそこ進んできて

校舎端の美術室の掃除

水道でアルミバケツに水を汲んでくる

水が冷たくて手が痛い

筆を洗う

 

9

あらかた終わった頃に顧問が来る

「先生が作ったんですか?」

「明日の掃除も頑張ってくれよ」

「全然こなかったくせに、嫌な奴」

 

11

寒いから窓を閉めて窓際で話す

「私が、みんな全くわかってないんだって愚痴言って。君が頷いてくれて」

「でも、あと少しだから」

涙声が混じる

「こうやって君と話すのもきっと最後」

「誰も私を評価してくれなかった!」

彼女は羽根の絵を布で包む

 

12

頬に触れる

突き飛ばされて、拒絶される

彼女は驚いた顔をしている

彼女は先に出ていく

 

13

次の日

美術室でシンに相談する

いつも真面目に受け応えてくれる

「ふられたんだ」

彼は驚いている

「彼女の何が好きだったんだい?」

 

14

練習

彼女を見れなくて下を見ていた

黒い影ばかりを見つめていて気持ち悪くなる

綺麗に並ばせられた生徒たちをぐしゃぐしゃにしたい

 

15

ベッドに倒れ込む

彼女の仕草、言葉を反芻する

肋骨を抱く

熱を覚えている

居てもいられなくなって飛び出す

濡れたまま

最近走ってなかったせいか、喉が痛くなる

 

16

周りに人はいなかった

南校舎のいくつかの教室には明かりがついていて、補修をしている最中のようだった。

雨で廊下は薄暗い

誰もいない廊下

静か

寒くて震える

パジャントの石膏像にキスをする

冷たさに彼女が好きだと気づく

 

17

風邪っぽくてマスクをする

掃除

水道で水を汲んでくる

濡らした雑巾でほこりを拭き取る

石膏像を必要以上に磨く

目が合わせられない

「すみません」

「私こそ」

 

18

唾を飲み込む

口が乾いてしょうがない

「じゃあ、どうやって証明できるの?」

「ごめん、いじわるな言い方になっちゃうね」

「私なんて、高校落ちちゃって私立行っちゃうし。ねぇ、私なんてやめて他の子にしなよ」

 

19

放課後

熱に浮かれて

切り絵を外す

美術室に行って綺麗に閉じて汚れないようにする

画鋲は危ないから、ゴミ箱に捨てる

 

20

罪なんてひとつも考えなかった

机の上に広げる

 

21

犯人は誰か

教室はその話で持ちきりだった

シンが珍しく怒っていた

「相当虚しいことをしていると思うよ」

 

22

集会前に

花瓶が割れてユリの花が散らばる

隣のクラスの彼女だけが拾っている

白く細い腕で丁寧に

手伝う

 

23

全校集会

罪について

 

24

職員室に鍵を返しに行くと美術教師がいる

「なあ、君ならわかってくれるよな?」

「はい」

「先輩の元の絵とか飾ったら、どうですか?」

 

25

「少し話をしていいかな?」

彼女は検討がついている様子

この間ずっと考えてて

君を突き飛ばしたときと同じ熱を持ってた

熱をもらったの

私は、最高傑作ができたと思う

これから大きくなってもこれ以上のものはできない、下降線なの

これが描けたのは、君がいたからだよ

絵を描くのは、これで最後にしようと思う

もう明日、来ないんでしょ

ありがとね

「ん、握手」

 

26

最終練習

彼女の様子が気になる

機敏

黒い制服にユリの造花が映えていた

ニュルンベルクのマイスタージンガー

主よ、人の望みの喜びよ

荘厳なメロディー

モザイク画は変わらず鮮やかだけれど、不思議と以前のようにグロテスクだとは思わなかった

そうあって然るべき、な形状であった

泣きそうになって、目を瞑る

 

27

靴箱にまだ入っていて踊り場で彼女を見つける

彼女はセーラー服のポケットから画鋲を取り出して言う

「君でしょ?」

涙が溜まっている

      ・・・

「君が破ってくれたんでしょう?」

窓にあたる雨粒を見つめる

「ねぇ、一緒に埋めない?」

 

28

誰もいない裏口から上履きのまま出る

雨に濡れながら埋める

僕が掘ると隣で彼女は取りだして埋める

熱が競り上がってくる

「もしやめるんだったらスケッチブック、ください。僕は見続けます、ずっと」

彼女はこっちを見ない

 

29

戻る途中で数人のクラスメイトとすれ違う

早足になる

手すりにもたれかかる

脱力して首が上にあがらない

 

30

疲れきって帰ろうとした、瞬間。

彼女は孔雀の羽根の油絵を壁に飾る

見惚れているのか動かない

それが不意に不安になる

後ろから抱きしめる

彼女の胸は小刻みに震えている

尖端も、その存在を認めてあげられるように包み込む