プロット

熱(ねつ)のプロット

ブラック・オパール(2023.2.9)

1.

アンのことを考えれば考えるほど、胸に実った果実は膨らんでいった。それはオパールのように硬く見えて、イチジクのように柔らかい。一見黒い球体のようだけれど、光の当たり具合によっては鮮やかに輝く。そんな得体のしれないものだった。

僕はそれを恋と名付けた。彼女のことを考えてるようで、実際はその果実の熟れ具合を確認していただけなのかもしれない。

 

1.

リョウは伏目がちに言った。

「アンのことが、好きなんだ。4人で行かないか」

自分の中ですとんと落ちた。そうだろうなとも思っていたし、彼の切り出し方も彼らしかったから、すんなりと飲み込めた。

「それならリンも連れて行かないか。恋愛に興味ないだろうし、僕と仲良いからね」

それは僕も同じさ、と心の中で呟いた。

果実を蓄えるには、肉のない僕の胸はあまりに小さすぎる。

 

1.

夏のテスト終わりに4人で夕方の海に行く

海の懐かしさを匂いとしてのせる

リンとはよく話す仲だったけれど、アンとはほとんど話さないし、リンとリョウが話すのは見たことない

だから、彼にとってやりやすい状況だったのだろう

疲れてリンと二人で海を眺める

「そういやさっきの車、凄かったね」

砂浜にスタックした車

 

2.

リョウとアンが車を取りに行く

「リョウって本当、かっこいいよな」

リンにアンへの好意を言う

「リンは好きな人、いないの?」

察する

 

2.

一人で考える。正直面を食らってしまった。

アンのどこが好きだったか

鎖骨を触る

日課のアンの録音を聴く

『海ってこんなに綺麗だったっけ?』

 

3.

いつものようにシーシャ屋でリンと待ち合わせ

先に来て本を読んでて何かと聞くと姫野カオルコのコルセット

彼女の家の話をする

「ねぇ、僕は恋に恋していただけなのかもしれない」

「よくわかんなくなったんだ」

リンは表情は変わらないけど、声が半オクターブ上がった

異様に彼女の口数が減る

エキゾチックなキャップ

ジューシーって言うけれど乾いた煙

アルファーヘル

キツすぎると吸い込んだ途端にむせる

ブランドもののバッグ

 

4.

リョウとバー

付き合うよう仕向ける

口から勝手に出ていた

水槽のネオンテトラ

「アンのこと、好きなんだろ?」

彼女のアパートに行って再試験の勉強を教えてやればいいじゃないか

リョウはイヤリングをいじる

「なぁ、平凡な日々の中でいい日があって悪い日があるんじゃなくて、ずっと中途半端な優しさに包まれた日々が続けばいいのにな」

 

5.

研究棟のソファで

落ち着く

匂い

なんであんなことを言ったんだろうと考える

リンと付き合おうとしてると気づく

リンに海に行かないかと送る

 

5.

姉さんが車を使っててリンが車を運転する

フィアット500

上手

「こんなの走ればすぐ上手くなるよ」

 

6.

リンに海で告白

リンは恥ずかしそうにした

「ねぇ、前はアンのことが好きだって言ってたじゃない?」

潤んでいてブラック・オパールのような瞳

涙でコーティングされた宝石のような

それでいて、真の強い

「リョウくんから聞いたんだけど、」

「ならアンと付き合えばいいじゃない!」

「好きなところ言ってみて?」

「私は君の気持ちが中途半端なままなんて嫌なの」

「アンと二人でご飯に行って。それで私にするんだったら、私の好きなところ10個教えてよ」

 

6.

もっと言葉を慎重に選べばよかった

電気を消したまま、風呂に入る

渡す予定だったネックレスを温める

姉のラグジュアリーケースに入れる

人の心は硬く見えても柔らかいもので、その柔らかさを一生懸命硬そうに見せるものなのかもしれない

 

7.

アンとイタリアン

スプーンとフォークで音を立てないように

慣れない環状線を運転してアクセルを踏み込む

万札を数枚サイフに入れて出てくる

子供っぽいアンに触れて、リンの良さに気づく

でもそれは暗に自分を納得させようとしているのではないかと思う

 

8.

リョウから告白して、好きだけど考えさせてって言われたとラインで聞く

 

8.

リン報告する「ヨウは本当にそれでいいのね?」

変に沈黙が生まれてしまう

「ねぇ、聞こえてる?」

「ん、ああ。ごめん。聞こえてるよ」

「姉さんが帰ってきたから、今日はこれで」

アンは僕の方なんて見てないはずだからな

 

9.

夢を見る

リンにネックレスをあげてベッドに押し倒す「"こんなこと"でしか喜ばせられないのね」

胸から吊り下がったオパールを撫でる

 

10.

リョウ実はお前の気持ちに気づいていてごめん

指輪をもらう

「リョウみたいにデカくないから、すぐ抜けちゃうよ」

そう思ってチェーン買っといたんだ

彼の熱い手

「なんでこんなにブラック・オパールのようなんだ!胸が張り裂けそうだ」

胸に埋まった禍々しいオパールを取り外したくて必死だった

 

11.

リンから誘われるバーに行く

「私は強引なのは嫌」

「ねぇ、まだアンのこと好きなの?」「私のどこが好きか整理はついた?」

「私と付き合ってよ。後悔させないよ」傾けたグラスを見つめたまま

 

11.

いっそナイフで割いて欲しい

加害性について

知恵袋に相談する

 

12.

トンチンカンな答え

 

12.

アンに相談されるやっぱり付き合うのやめようと思って。私、好きってどういうことかわからないの

「リョウって正直いいやつじゃん」

「うん」

「博識で話も面白くて。おまけに気も利く」

「うん」

電話口に擦れる音が聞こえる。髪をいじってるんだろう

「付き合ってしまえばいいじゃない」

恋愛の話をする

 

13.

リンと夜中に電話

割れたガラスを拾い集めるように慎重に

優柔不断だって怒る

「ねぇ、キスはその証明になる?」

少し沈黙があって

「なるわけないじゃない。馬鹿にしないで」

切られる

 

14.

リョウからふたりの様子を聞く

大学の研究棟

医学書を抱えていた

遊園地に行ったこと

 

15.

最後にアンとのライン

ありがとう、君と話して踏ん切りがついたの。

暗闇の中でロック画面を見つめている

すぐ消した

『おやすみ』

瞬きが出来なかった

はっとなって消して布団をかぶる

いつまでもオパールの輝きは眼裏から消えなかった

 

16.

4人でシーシャに行く

「俺たち、付き合い始めたんだ」

「アンがどうしても前みたいに4人で来たいって言ってさ」

初めてのことをする、アンのびくついている様子に目を逸らす

「アンちゃんは、どんなお酒が好きなの?」「甘いやつ」

リン「でもよかったね。ふたりともお似合い」

 

16.

リンを誘う

姉のケースから取り出す

 

17.

夕方に砂丘に行ってその入り口で止める

リンとぽつりぽつりと話しながら砂丘を越える

「ねぇ、少し前まで胸の中で果実を育ててたんだ」

リンを砂に押し倒して沈黙

ネックレスをはめてあげようとするけど彼女は嫌がる

「キリッとした目」

「すっとした鼻筋」

汗ばむ首筋を撫でる

「真が強いこと」

頬にキスをする

「こんな僕を受け入れてくれること」

拒否しないのが心地よかった

彼女の指が僕の鎖骨に触れる。

彼女の指は僕の身体に穴を開けて破こうとしている